続きです。
今回は、袖ヶ浦高校の情報コミュニケーション学科が成功している要因や、他校に展開できるかどうかを考察していきたい。
まず、前回の、デジタル教科書が普及しない、たった一つの理由に書かれている問題点はどのようにクリアされているのか?
袖ヶ浦高校のやり方では、問題点の多くの部分が解決されていたように思える。
- 落としたら終わり
これはサードパーティーのカバーをつければ、わりと大丈夫。自費で買わせるため、自分の物という意識になり、大切に使うようになる。 - バッテリーが持たない
1日は持つ。全ての授業をiPadでやってるわけではないし。 - 高価。あまりにも高すぎる。
自費で買う事で、学校負担はかなり少なくしている。さらに、親の理解がある。少なくとも、親が金を持っている。わかっていて入ってきているので、トラブルは無い。 - 手書き文字が微妙
手書き文字は紙のノートに書くから、別にどうでもいい。iPadはノートを置き換える物では無い。 - ネットワーク対応できるの?
業務用ルータであれば、40台程度の同時接続は可能。さらに、学校独自でインターネット回線を契約しているため、通信には問題なし。
袖ヶ浦高校では、各学年1クラスのみが使っているのでなんとかなっているが、学校全員が使うとなるとわからない。 - 教材の作成、配布とかどうするの?
配布はDropBoxを使っている。iTunes U なども活用しているため、そんなに高コストでは無い。学校内にサーバを持たず、外部のサービスをどんどん使っている。DropboxやEvernoteなど。 - セキュリティの対応どうするの?
iPadはセキュリティの事を考えなくて良い。外のサービスに置くデータは、人に見られても良い物にする。最悪、流出してもそれほど問題のないデータをオンラインストレージに置く。端末のアップデートは、少なくとも3年くらいは行われるし、現状で、ウイルスが跋扈する、という話も聞かない。エログロ野放しのアンドロイドよりは安心。
教科書やノートを「置き換える」のではなく、いままでのやり方に「追加する」やり方を取っていたため、運用上の問題点は少ないように感じた。
果たして他の学校に導入ができるのか?
この問題に関しては、生徒が端末を自費で購入するのであれば、可能性はある。
学校側が端末を用意する場合、さまざまなデメリットが発生する。
具体的には、教員側に以下のような負担が発生する。
- 授業中に加えられた変更を元に戻す
- 充電
- 破損の対応
- 学校の予算で買った場合、最低5年は使い続ける事になる。骨董品で授業をやるはめに。
そもそも、それってパソコン教室でやれば良くね?と言われると反論しにくいし、日々タブレットやスマートフォンを使っていない生徒に、1から操作を教えるだけで高コストだ。
導入する条件
では、どのような条件なら運用が可能か。
- 生徒が自費で購入。これは絶対に必要な条件。学校で用意する、という選択をした瞬間、全く別の計画になる。
生徒が自費で買うのであれば、iPadでなくとも、適当な中華Pad(Android)でも良いかと思う。1台1万円以下で買えるし。 - 学校側で専用の回線を用意する。これも絶対に必要。学校のLANではアクセスブロックが厳しいので授業にならない可能性が高い。
得にオンラインストレージは全滅のはずなので、面白いことはできない。もしくは、アクセス制限を外してもらうか。 - その手の分野に明るい、やる気の能力のある若い教員と校長がいること。できれば5人くらい。でもこれはジレンマで、若い教員が多い学校(=底辺校)ではタブレットを用いた授業どころではないし、一番効果が見込める中堅校は年寄りばっかりで導入のしようが無い。上位校ではこんな事やらなくてもコミュニケーション能力は高いだろうし。
- 県からある程度の予算が出ること。新しい事をやろうと思ったら、とりあえず設備投資が必要になる。資金が潤沢にある学校ならいいけれど、貧乏な学校はどこからか援助を受ける必要がある。
- それなりに、ものがわかる生徒がいること。学校に遅刻せず、意欲的に学ぼうとする意思がある生徒が多い事。
今回、タブレットは既存の授業にプラスアルファをするものなので、通常の授業が崩壊している所に導入しても意味が無いように思える。
以上。あとで追記します。